MCP とは何か。Claude を外の世界に接続する共通規格
MCP(Model Context Protocol)は、Claude のような AI を「外のサービス」に繋ぐための共通規格です。Drive を読ませたい、Gmail を操作させたい、社内 DB に問い合わせさせたい——そういう「外部接続」を、毎回の独自実装ではなく、共通の規格で実現するためのプロトコルです。USB-C やプリンタドライバの考え方と重ね合わせると、その狙いが一気に腑に落ちます。
はじめに
ここから Step 3 のもう一つの大きな柱、MCP の話に入ります。MCP は Model Context Protocol の略で、ひと言でいうと 「AI と外部ツールをつなぐための共通プロトコル」 です。
「プロトコル」と聞くと身構える方が多いかもしれません。でも、実は身近な例がたくさんあります。
- USB-C:どのメーカーのパソコンも、USB-C ケーブル1本で外部機器に繋がる
- HTTP:どんなブラウザも、http:// で始まる URL を同じ手順でリクエストできる
- プリンタドライバ:印刷したいソフトは、共通の印刷インターフェイスにファイルを渡すだけで、あとはドライバが各メーカーのプリンタに合わせて変換してくれる
MCP がやろうとしているのは、これと同じことです。「AI に外のサービスを操作させたいときに、毎回バラバラの繋ぎ方を覚えなくて済むよう、共通の規格を1つ作っておく」——そのための規格が MCP です。
本記事では、
- MCP とは何か(仕組みと位置づけ)
- なぜ必要だったか
- サーバーとクライアントの関係
- 何ができるようになるか
- Anthropic 以外も採用していること
- セキュリティの基本
の順で、概念をいちから整理していきます。MCP シリーズは全3本構成で、本記事の概念編に続いて、
- MCP サーバーを使う:既製サーバーを Claude Code に繋ぐ手順
- MCP サーバーを自作する:最小構成で自分のサーバーを立てる
と進みます。
MCP が解決している問題
Claude Code を使い込むと、「Claude に手元のパソコンの中だけじゃなく、外のサービスも操作させたい」 と思う場面が必ず出てきます。
たとえば、
- Google Drive にあるドキュメントを読ませて要約させたい
- Gmail の特定のメールを検索して返信案を作らせたい
- GitHub の Issues を作らせたい
- Slack に通知を送らせたい
- 社内のデータベース に問い合わせて結果を集計させたい
これらは、Claude Code の基本機能(ファイル読み書きとシェル実行)だけでは足りません。外部のサービスごとに、認証・API 呼び出し・結果の整形 という別の仕事が必要になるからです。
ここで MCP が登場する前の世界を想像してみてください。各 AI ツールが、
- ChatGPT 用の Drive 連携
- Claude 用の Drive 連携
- Cursor 用の Drive 連携
——というふうに、同じ Drive 連携を AI ごとに別々に実装 することになります。これは Drive 側にも AI 側にも余計な負担で、新しい AI が出るたびに連携が一からやり直しになります。
MCP は、この問題を 「AI 側と外部サービス側のあいだに共通プロトコルを1つ挟む」 という発想で解いています。Drive 側は「MCP に対応したサーバー」を1つ用意すれば、それを Claude も ChatGPT も Cursor も 同じ手順で使えるようになる——という構造です。
サーバーとクライアントの2役
MCP には 2つの役 が登場します。難しい話ではないので、まず役の対応を押さえてしまいます。
| 役 | 担当 | 例 |
|---|---|---|
| MCP サーバー | 外部サービスとやり取りする側 | Drive 用サーバー、Gmail 用サーバー、社内 DB 用サーバー |
| MCP クライアント | AI 側でサーバーを呼ぶ側 | Claude Code、Claude Desktop、その他の MCP 対応 AI |
- MCP サーバー は「Drive を読みたいなら、こういうリクエストを投げてくれれば、こう返します」というインターフェイスを公開している側
- MCP クライアント は AI(Claude Code)の側にいて、「Drive を読みたい」と判断したときに MCP サーバーへリクエストを投げる側
WordPress に例えるなら、
- MCP サーバー = プラグイン本体:実際の処理を担当
- MCP クライアント = WordPress 本体:プラグインを呼び出す側
という対応関係に近いです。WordPress 本体(クライアント)は個々のプラグイン(サーバー)の内部を知らなくても、決まったフックさえ知っていれば呼び出せる——MCP もそれと同じ思想です。
サーバーの「中身」は3種類
MCP サーバーは、AI に対して 3種類の機能 を提供できる仕組みになっています。
| 種類 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| Tools(ツール) | AI が「実行する」操作 | Drive のファイル一覧を取得、Issue を作成、メールを送信 |
| Resources(リソース) | AI が「読む」コンテンツ | 特定のドキュメント、データベースの行 |
| Prompts(プロンプト) | AI に渡す決まったプロンプトテンプレート | 「この形式でレポートを作って」 |
このうち Tools が圧倒的に主役 です。Claude Code から見れば、MCP サーバーが提供する Tools は、「自分が呼べる新しい関数」が増えたのと同じ感覚で扱えます。
たとえば Drive 用 MCP サーバーが list_files という Tool を公開していれば、Claude は会話の中でこの list_files を「自分が呼び出せる手段の1つ」として認識します。「Drive のファイル一覧を見せて」と頼むと、Claude が自動的に list_files を呼び出してくれる、という流れです。
Claude Code 側での見え方
MCP サーバーが Claude Code に接続されると、その Tools は mcp__<サーバー名>__<ツール名> という名前で内部的に扱われるようになります。
mcp__google_drive__list_files
mcp__google_drive__read_file
mcp__github__create_issue
mcp__slack__send_message
普段の使い方では、この命名を意識する必要はほとんどありません。「Drive のファイル一覧を見せて」と頼むだけで Claude が裏で mcp__google_drive__list_files を呼んでくれます。「Claude の手数が増えた」だけ で、表面的な使い心地は何も変わりません。
ただ、/help や設定ファイルを覗いたときに、見慣れない mcp__ で始まる名前が並んでいる のを見ることがあります。そのときは「ああ、これは MCP サーバー由来の機能なんだな」と気づけると、ひとつ視界がクリアになります。
何ができるようになるか
MCP を理解するには、実際にどんなサーバーがあるか を眺めるのがいちばん手っ取り早いです。代表的なものを紹介します。
| サーバー | できること | 配布元 |
|---|---|---|
| Filesystem | 指定したフォルダのファイル読み書き | Anthropic 公式 |
| GitHub | リポジトリ操作、Issue/PR の取得・作成 | Anthropic 公式 |
| Google Drive | Drive 上のドキュメント一覧・読み込み | 有志・公式どちらも |
| Gmail | メール検索・読み込み・下書き作成 | 有志 |
| Google Calendar | 予定の取得・追加 | 有志 |
| Slack | チャンネル一覧、メッセージ送信 | Anthropic 公式 |
| Postgres / MySQL | データベースへのクエリ実行 | Anthropic 公式 |
| Puppeteer | ブラウザ操作(スクレイピング、PDF生成) | Anthropic 公式 |
これは一例で、実際にはコミュニティから日々新しい MCP サーバーが公開されています。「自分が使っている SaaS の操作を AI に任せたい」と思ったら、まず MCP サーバーが既にあるか調べる ——というのが、いまの定石になりつつあります。
Anthropic 以外も採用している
MCP の重要な特徴のひとつが、Anthropic 以外の AI ベンダーも採用している ことです。
MCP は Anthropic が 2024 年末に オープンプロトコル として公開した規格で、その時点で「特定のメーカーに縛られない共通規格」として設計されています。実際に、
- Claude(Anthropic)
- 一部の OpenAI 系ツール
- Cursor
- その他の AI エディタ・エージェント
が MCP に対応しています。これは 「いま MCP サーバーを書いておけば、将来別の AI に乗り換えても無駄にならない」 という資産形成の意味でも大事なポイントです。HTTP のような共通プロトコルが「特定のブラウザに縛られない Web」を作ったのと、似た立ち位置を狙っています。
サーバーの動かし方は2種類
MCP サーバーには、動かし方の系統が2つ あります。これは使うときに知っておくと、認証フローの違いが理解しやすくなります。
系統 A:ローカル(STDIO 系)
サーバー本体を 自分のパソコンの中で起動 して、Claude Code と直接プロセス間通信する方式です。
| 利点 | 欠点 |
|---|---|
| 認証が単純(必要なら API キーを設定ファイルに書く) | サーバー自体を自分でインストール・起動する必要がある |
| 通信は手元のマシン内で完結し、外に漏れない | サーバーの管理(更新・停止)も自分の責任 |
Filesystem や Postgres など、手元のリソースを扱うサーバー はだいたいこの方式です。
系統 B:リモート(HTTP / SSE 系)
サーバー本体は 遠隔のサーバーで動いていて、Claude Code とは HTTP(または SSE)で繋ぐ方式です。
| 利点 | 欠点 |
|---|---|
| サーバー側の管理は提供者が見てくれる | OAuth などの認証フローが必要 |
| 自分の手元にサーバーをインストールしなくていい | 通信は外部に出る(その分セキュリティ意識が必要) |
Google Drive や Gmail のように、外部サービスとやり取りするサーバー は OAuth 認証が必要なので、こちらの方式が多いです。
実際に MCP サーバーを使うときは、「このサーバーはどっちの系統か」 を最初に把握すると、認証の手順がイメージしやすくなります。
セキュリティの基本
MCP は便利ですが、「Claude に外部サービスへのアクセス権を渡す」 ことを意味します。セキュリティ意識は欠かせません。
押さえておきたい3点
| 観点 | 何に気をつけるか |
|---|---|
| 権限スコープ | 「読むだけ」のサーバーと「書き換えられる」サーバーを区別する。書き換え系は本当に必要なときだけ繋ぐ |
| 発行元 | サーバーの作者が信頼できる先か。GitHub のスター数や、リリースの活発さで判断 |
| 認証情報の保管 | API キーやトークンは設定ファイルに平文で残ることがある。共有 PC では特に注意 |
WordPress プラグインを入れるときに「このプラグインは何ができるのか」を確認するのと同じ感覚で、MCP サーバーの「この権限で何ができるか」 を確認する習慣を持つと、事故が起きにくくなります。
Claude による確認の経路を残す
Claude Code は標準で、MCP サーバーの Tools を呼ぶときに「実行していいですか?」という確認 を入れる挙動になっています(モードによる)。これは命綱なので、Bypass Permissions モードで MCP を使うのは推奨しません。少なくとも初めて繋いだサーバーでは、確認の経路を残しておくのが安全です。
MCP との関わり方
MCP との関わり方は、Plugins と同じく2種類に分かれます。
| 関わり方 | 必要なこと | 始めどき |
|---|---|---|
| 使う(既製サーバーを繋ぐ) | claude mcp add で1コマンド | 興味のある外部サービスを操作させたくなったとき |
| 作る(自作サーバーを書く) | TypeScript / Python の SDK を使ってサーバーを実装 | 既製サーバーがない外部サービスを操作したくなったとき |
Plugins と同じく、最初は 「使う」側 で十分です。次の記事「MCP サーバーを使う」で、Filesystem・GitHub・Drive を例に、実際に繋ぐ手順を扱います。
まとめ
MCP の要点を整理します。
- MCP は「AI と外部ツールをつなぐ共通プロトコル」:USB-C やプリンタドライバと同じ立ち位置
- 2024 年末に Anthropic が公開:他社 AI も採用するオープン規格
- 2つの役:MCP サーバー(外部サービス側)と MCP クライアント(AI 側)
- サーバーが提供するのは Tools / Resources / Prompts:主役は Tools
- Claude Code 内では
mcp__<サーバー名>__<ツール名>で扱われる - 代表的なサーバー:Filesystem / GitHub / Drive / Gmail / Slack / Postgres / Puppeteer など多数
- 動かし方は2系統:ローカル(STDIO)/リモート(HTTP・OAuth)
- セキュリティ:権限スコープ・発行元・認証情報の3点で判断
- 最初は「使う」側で十分:自作は既製サーバーがない場合の選択肢
MCP の概念がつかめたら、次の記事「MCP サーバーを使う」で、Filesystem・GitHub・Google Drive の3つを例に、実際に Claude Code に繋ぐ手順を見ていきます。claude mcp add というコマンド1つで、新しい外部サービスが Claude の手の届く範囲に入ってくる——その体験は、MCP の便利さを最初に実感できる瞬間です。
WordPressを実際に動かしてきたサーバー:ロリポップ
Claude Code でWordPressサイトを組み立てるとき、最初に置く先として無理のないレンタルサーバー。月数百円から始められ、WordPressの自動インストールにも対応しています。設定で詰まりがちな初期段階の時間をかなり減らせます。